@ 登記の仕組み
1. 登記制度の意義
登記とは、不動産に関する権利等を公示する仕組みで、不動産は、その不動産の所在地を管轄する登記所ごとに登記され、登記
簿が備え置かれる。
管轄区域をまたがる不動産の場合、法務大臣または法務局もしくは地方法務局の長がどちらかの登記所を指定して、登記がなさ
れる。
したがって、1つの不動産が、複数の登記所に登記されるということはありません。
2. 不動産登記簿
不動産登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行われ、登記簿とは、登記記録が記録される帳簿であり、磁
気ディスクをもって調製するものをいう。
登記記録は原則として1筆の土地または1個の建物ごとに、電磁的記録によって作成される。
1筆の土地または1戸の建物ごとに、独立して取引が行われるので、登記記録も別に行なう。
登記記録は、@表題部、A権利部に区分して作成される。
3. 登記記録の記録事項
表題部には、表示に関する登記が記録され、土地であれば、不動産番号、所在、地番、地目、地積(面積)など、建物であれば、不
動産番号、所在、家屋番号、種類(居宅・店舖などの区別)、構造、床面積など。
なお、建物の評価額の表示は、記録されない。
権利部には、権利に関する登記が甲区と乙区に分かれ記録される。
甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利(抵当権、地上権など)に関する事項が記録される。
表題部に登記することを表示に関する登記(表示の登記)、権利部に登記することを権利に関する登記(権利の登記) といい、所有
権の登記がない不動産については、表題部に、所有者の氏名・住所が記録され、表題部に所有者として記録されている者を表題部
所有者という。
4. 地図・建物所在図
登記記録の付属書面として、土地には地図、建物には建物所在図があり、土地や建物の位潰関係を通常は、複数の土地・建物を
まとめて示す形になっている。
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A 権利の順位
不動産に関する権利は、原則として先に登記した者が優先する。
したがって、この順位を登記簿上どのようにして判断するか、権利の関係によって異なる。
まず、甲区と甲区、乙区と乙区という同じ区に登記された権利同士の関係では、順位番号欄の番号によって決定する。
これに対して、所有権と抵当権のように、別の区に登記された場合は、受付番号で前後を判断することになります。順位番号と異な
り、受付番号は、甲区乙区を区別することなく、登記を受け付けた順番どおり通し番号で振られるので、区が異なっても順位がわかる
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B 許登記事項甲明芦の交付等
登記官に対し、誰でも手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面(登記事項証明書)、ま
たは記録されている事項の概要を記載した書面(登記事項要約書)の交付を請求することができる。
この場合の手数料の納付は、原則として登記印紙で行われ、その他地図や建物所在図等の写しの交付も請求することができる。
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C 登記申謂の手続き
1. 申請主義の原則
申請主義の原則とは、当事者の申請または官公署の嘱託がない限り、登記官が勝手に登記すること(職権による登記) はない、と
いう原則で、登記をするかどうかは本人の意思に任せてある。
しかし、この原則は表示の登記にはあてはまらず、不動産の物理的な現況を明らかにする為、当事者からの申請がなくても、登記
官の職権により登記することができる。
2. 共同申請の原則
権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人(売主)を登記義務者、登記上、直接に利益を受け
る者(買主)を登記権利者といい、原則として登記義務者と権利者は共同で登記を行わなければならない。
ただし、例外として相続(または法人の合併)による登記、所有権保存登記、表示の登記のように、単独でしか申請できないものは、
共同申請の必要はない。
また、判決に基づく登記や仮登記の申請において、仮登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命ずる裁判所の処分がある
ときは、単独申請が認められる。
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D 登記申請の方法
1. 申請の方法
登記の申請は、@電子情報処理組織を使用する方法、A申請情報を記載した書面(申請情報の全部または一部を記録した磁気デ
ィスクを含む)を提出する方法、のどちらかで行われる。
電子情報処理組織を使用する方法とは、インターネットを利用しオンラインで申請する方法で、申請方法は登記の目的及び登記原
因に応じ、1つの不動産ごとに作成して提供しなければならない。
ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的・登記原因・日付が同一であるときは、
一つの申請情報で申請することができる。
2. 登記識別情報
登記名義人が登記義務者として登記の申請をするときは、原則として、登記所に登記識蜘情報を提供しなければならない。
登記識別情報とは,登記名義人本人の申請であることを確認するための情報で、十数桁の英数字がランダムに羅列されたパスワ
ードのようなもので、登記識別情報は、前回の登記申請が完了した
ときに登記所が登記名義人になった者に対し通知するものなので、登記名義人でなければ知らないはずの情報で、本人が申請し
ている可能性が高いといえる。
3. 登記原因情報
権利に関する登記を申請する場合は、申請人は原則として、その申請情報とあわせて登記原因を照明する情報を提供しなければ
ならない。
登記原因情報とは、売買による所有権移転登記の申請であれば、当該売買契約の内容に関する情報を示す。
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E 仮登記
1. 仮登記とは
文字どおり仮の登記のことで、通常行う本来の登記のことを本登記といい、その本登記を直ちに行うことができないときに、仮登記
をする。
次の2つの場合に仮登記ができる
@ 登記すべき権利の変動は生じているが、登記申請に必要な情報を登記所に提出できないとき
A 登記すべき権利の変動は生じていないが、将来権利変動が生ずる予定があり、その請求権を保全する必要があるとき
@は登記義務者が登記識別情報を失念して提出できないときなどであり、Aは売買の予約や停止条件付き売買契約を締結してい
る場合など。
2. 仮登記の申請
仮登記の申請は、原則共同申請で行う。ただし「共同申請の原則」で述べたとおり、仮登記義務者の承諾または仮登記を命ずる裁
判所の処分があるときは、単独で申請することもできます。
また、仮登記の申請の際には、登記識別情報の提供は不要。
3. 仮登記の効力
仮登記そのものでは第三者に権利を対抗することはできず、仮登記を本登記にした時点で、はじめて第三者への権利主張ができ
るようになる。
そして、仮登記を本登記に改めたときは、その本登記の順位は仮登記の順位によることになる。
4. 仮登記を本登記にする場合の問題点
仮登記を本登記にする場合、これによって順位が劣後することになる他の登記との関係が問題となる。
所有権の仮登記を本登記にする場合、順位が劣後することになる他の登記は、抹消される。
ただし、抹消される登記の権利者の承諾がないと、仮登記を本登記にすることはできない。
所有権以外の仮登記を本登記にする場合、他の登記は順位が変わるだけで抹消されることはなく、他の権利者の承認を必要とし
ない。
5. 仮登記の抹消
仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請することができ、また、仮登記の登記名義人の承諾があれば、当該仮登記
の登記上の利害関係人(その仮登記の設定をした仮登記義務者など)が単独で仮登記の抹消を申請することもできる。
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F 登記の申請義務等
1. 表示に関する登記の申請義務
土地の売買等における、所有権移転登記をする義務はないが、表示に関する登記については、登記の申請義務が課されている。
表示に関する登記の必要が生じたとき(建物を新築した場合や、建物の増築、滅失などの場合など) は、当事者は,1カ月以内に登
記の申請をしなければならない。
2. 付記登記
姓が変わったなど、すでにある登記(主登記)の順位をそのまま用いたうえで、主登記に付随するような形でなされる登記を付記登
記といい、付記畳記は、独立した順位番号をもたず、主登記の番号に枝番をつけた形で行われる。
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G 区分建物の登記
1. 賢記記録の構成
区分建物では、専有部分ごとに区分して所有される為、登記記録も専有部分(規約共用部分とされている場合も含む) ごとに作成
される。
区分建物の場合、表題部として、一棟の建物全体の表題部と当該専有部分の表題部が設けられ、権利部(甲区・乙区)は、通常の 一戸建ての建物の場合と同様。
2. 表題登記の申請
区分建物の表題登記の申請は、マンションを建てて最初の所有者になった者(分譲業者など)が 、一棟の建物全体について一括し
て申請しなければならない。
3. 規約共用部分の登記
集会室などの規約共用部分は、権利部に登記せず、規約共用部分とされた専有部分の表題部に登記される。
4. 敷地権の登記
マンションの敷地を利用する権利は、共有名義のため、土地の登記簿ではなく、敷地利用権に関する登記を、区分建物の登記記
録の表題部に記録するように申請することができる。
このように区分建物登記の表題部(全体の表題部および各専有部分の表題部)にその存在が表示された敷地に対する権利のこと
を敷地権という。
敷地権の表示の登記をするときは、登記官が職権で土地の登記記録について、権利部の甲区または乙区に所有権、地上権その
他の権利が敷地権である旨の登記をしなければならない。
5. 敷地権の登記の効力
敷地権の登記が建物登記簿の表題部に行われるのは、区分所有権と敷地利用権が分離されず、一体になっているためで、敷地
権の表示の登記をした後、区分建物についてなされた登記は、原則として、土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する
ただし、土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じていた場合などは、このような区分所有権と敷地利用権の分離に結びつく
登記が、例外的に認められている
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