業務上の規制

 ここでは業務上の規制について触れていきます。
 業務上の規制の内、自ら売主制限の事項について行います。

ページ内目次

 自ら売主制限
  自ら売主制限とは
  クーリング・オフ制度とは
  自己の所有に属しない宅地・建物の売買契約制限
  暇疵担保責任の特約の制限
  損害賠償額の予定等の制限
  手付の額の制限等
  手付金等の保全措置
  割賦販売契約の解除等の制限
  所有権留保の禁止
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自ら売主制限とは

 宅建業者が売主となり、宅建業者でない者が買主となる宅地・建物の売買契約には、他の場合には適用されない8つの制限が適用されます。

@ クーリング・オフ
A 自己の所有に属しない宅地・建物の契約制限
B 瑕疵担保責任の特約制限
C 損害賠償額の予定等の制限
D 手付の額の制限等
E 手付金等の保全措
F 割賦販売契約の解除等の制限
G 所有権留保等の禁止

この8つの制限を自ら売主制限という。相手が宅建業者の場合この自ら売主制限だけは適用されない。

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クーリング・オフ制度とは

クーリング・オフという言葉は通称であり、正式な法律用語ではない。
「事務所等以外の場所でした買受けの申込みの撤回、または売買契約の解除」を通称「クーリング・オフ」と呼んでいる。
 問題文では「買受けの申込みの撤回」、「宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づく売買契約の解除」などということもある。


1.制度の内容
 宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約について、事務所等以外の場所において、買受けの申込みをした者、または売買契約の締結をした買主は、原則として、書面により当該買受けの申込みの撤回または契約の解除をすることができる。


2.クーリング・オフができない「事務所等」

@ 宅建業者の事務所
A 宅建業者の事務所以外の場砺で継続的に業務を行うことができる施設を有するもの
B 宅建業者の案内所(土地に定着したものに限る)
C 売主である宅建業者から代理・媒介の依頼を受けた宅建業者の@〜Bの場所
D 宅建業者(代理・媒介をする宅建業者を含む) が、取引主任者を置くべき場所(土地に定着する建物内のものに限る)で契約に関する説明をした後、展示会等の催しを土地に定着する建物内において実施する場合の、催しを実施する場所(A〜Dは専任の取引主任者の設置義務があるもの)
E 相手方(一申込者・買主) から申し出た場合の、相手方の自宅・勤務場所

 宅建業者の事務所や一定の案内所などで契約等をした場合には、クーリング・オフ制度の適用対象になりません。
 これに対し、喫茶店・ホテル・旅館などで契約等をした場合には、クーリング・オフ制度の適用があります。
 テント張り等の「土地に定着していない」案内所等も、クーリング・オフ制度の適用対象とされています。
 宅建業者から申し出て、相手方の自宅・勤務場所で契約等をした場合には、クーリング・オフ制度の適用があります。
 買受けの申込みと売買契約の締結の場所が異なる場合には、買受けの申込みの場所を基準に判断します。


3.クーリング・オフの制限
 次のいずれかに該当する場合は, クーリング・オフをすることができなくなる。

@ 宅建業者が申込みの撤回等を行うことができる旨を書面で告知した日から起算して、8日間を経過したとき
A 買主が宅地・建物の引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったとき

(この8日間とは1週間をさす、つまり月曜日に告知されたら、次の月曜日までが適用範囲内となる。)なお、宅建業者には、クーリング・オフできる旨の告知をする義務はないが、書面でその旨の告知を行わない場合(告知が行われなかった場合や、口頭による告知の場合) には「8日間」の期間制限が始まらない。


4.クーリング・オフの方法
 クーリング・オフをする場合には, 書面で行う必要があり、クーリング・オフの効力は、その書面を発した時に生じます。
 「書面を発した時」とは、具体的にはポストに投函した時等のことで、仮に「買主が宅建業者から告げられた住所にあててクーリング・オフする旨の通知を発信したが、転居先不明で戻ってきた」場合でも、書面を発した時にクーリング・オフの効力が生じているため、クーリング・オフは有効となります。そして既に支払った手付金・代金等は、返還してもらえます。
 また、宅建業者は、クーリング・オフに伴う損害賠償や、違約金を請求することはできません。


5.クーリング・オフに関する特約
 クーリング・オフの規定に反する特約で申込者・買主に不利な特約は無効となります

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自己の所有に属しない宅地・建物の売買契約制限

 自己の所有に属しない宅地・建物とは、
  @ 売主以外の者の所有に属する(他人物) 宅地・建物
  A 未完成の宅地・建物
1. 他人物売買の制限
 宅建業者は、自己の所有に属しない宅地・建物については、自ら売主となる売買契約(予約を含む) を締結してはならない。
 宅建業者が、当該宅地・建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く) を締結している等の場合には売買契約を締結することができる。

――――重要語句――――
契約の効力の発生が条件に係るもの もし転勤が決まったらこの家をあなたに譲る」という契約のように、「ある条件が成立したら契約の効力が発生する」というもの。
このように契約の効力発生についている条件のことを「停止条件」という。

2.未完成物件の制限
 未完成物件も「自己の所有に属しない宅地・建物」にみなされ、宅建業者は、原則として、未完成物件につき自ら売主となる売買契約(予約を含む) を締結してはならない。
 ただし、宅建業者は、手付金等の保全措置を講ずれば、自ら売主として未完成物件の売買契約を締結することができる。

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暇疵担保責任の特約の制限

1.瑕疵担保責任とは
 売買の目的物に瑕疵(キズ、欠陥)があった場合に、売主の負う責任のこと。
 民法により、目的物に隠れた瑕疵がある場合には、善意無過失の買主は、損害賠償の請求、また瑕疵により契約の目的を達成できないときは、契約を解除することもできるとされています。
 瑕疵担保責任を追及することができる期間は, 買主が瑕疵の存在を知った日から1年間です


2.瑕疵担保責任の特約に関する制限
 宅建業者が自ら売主となる売買契約においては、瑕疵担保責任につき、民法の規定よりも買主に不利な特約は、無効となる(その場合売主は、民法の規定どおりの責任を負う)。
 ただし、瑕疵担保責任を負う期間を、引渡しの日から2年以上とする特約は, 許される。

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損害賠償額の予定等の制限

1.損害賠償額の予定とは 債務不履行があった場合、損害賠償の額は原則として、債権者が実際に損した額です。その額に争いがある場合には、損害賠償を請求する債権者のほうで、損害の額を証明しなければならない。
 しかし、損害額の証明に失敗して賠償請求ができないという事態や、賠償額に関する争いが長期化する事態を防ぐために、予め定められた額の損害賠償を請求することができる旨を定めている。


2.損害賠償額の予定等の制限
 宅建業者が自ら売主となる売買契約において、債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償額の予定や、違約金の定めをするときは、それらの合計額が代金額の2/10を超えてはならない。
 2/10を超える定めを行なった場合、2/10とする。

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手付の額の制限等

1.手付とは
 売買契約等を締結した際に支払われる金銭等のことをいい、次の4種類があります。
 @ 証約手付 : 契約の成立を証する手付
 A 解約手付 : 下記参照
 B 損害賠償額の予定としての手付
 C 違約罰としての手付
 解約手付とは、「買主は支払った手付を放棄し、売主は手付金の倍額を償還して、それぞれ契約を解除する手付のこと。
 ただし、手付の放棄や倍額償還により契約を解除することができるのは、相手方が契約の履行に着手するまでである。このとき、自ら履行に着手した場合でも、相手方が履行に着手していなければ、契約を解除することができる。


2.手付の額の制限等
 宅建業者が自ら売主となる売買契約においては、

@ 手付が支払われたときは、当事者の一方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を償還して、契約を解除することができ、これよりも買主に不利な特約は無効になる。
A 宅建業者は、代金額の2/10を超える手付を受領してはならない。
(民法では, 手付は解約手付と推定{当事者が反対の特約をすれば、解約手付ではなくなる}され、手付の額も自由です。)

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手付金等の保全措置

1.手付金等の保全措置とは
 宅建業者は、手付金等の返還が不可能になってしまう事態を防ぐため、銀行の保証や保険などによって、 買主から受け取ったお金を確実に返せるような措置を講じておかなければならない。


2.保全措置が必要な場合
 1)手付金等とは
 「手付金等」とは、「代金の全部または一部として授受される金銭および手付その他の名義をもって授受される金銭で、代金に充当されるものであって、契約の締結日以後その宅地・建物の引渡し前に支払われるもの」をいう。
 2)保全措置の要否
 宅建業者は、自ら売主となる売買契約において、原則として保全措置を講じなければ、手付金等を受領することができない。
 ただし、次のような例外が定められています。
 手付金等の保全措置(例外)
 次の場合、宅建業者は、保全措置を講じなくても手付金等を受領することができる。
[1] 受領しようとする手付金馨の額が(すでに受領した手付金等とあわせて)下記の場合

@ 工事完了前に契約を締結した場合は、代金の額の5/100以下かつ1,000万円以下
A 工事完了後に契約を締結した場合は、代金の額の1/10 以下かつ1,000万円以下

2.買主に所有権移転の登記がされたとき、または買主が所有権の登記をしたとき


3.保全措置の方法
 宅建業法は、保全措置の方法として、銀行等による保証、保険事業者による保証保険、指定保管機関による保管による方法を定めている。

@銀行等による保証 銀行等(銀行、信託会社、信用金庫など)が、宅建業者の受け取る手付金等全額の返還について連帯保証するもの。    
A保険事業者による保証保険 宅建業者が受領した手付金等を返還できなくなった場合に、保険事業者がその額を填補するもの。
B指定保管機関による保管 指定保管機関が、手付金等を宅建業者の代わりに受け取り預かっておき、買主は、宅建業者に対して手付金等の返還請求権を取得した場合、指定保管機関から返還を受けることができる。

 上記@Aは未完成物件・完成物件のいずれの場合にも使うことができ、完成物件については、負担の少ない、Bの指定保管機関による保管の制度が用意されています。

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割賦販売契約の解除等の制限

 宅建業者は、自ら売主となる宅地・建物の割賦販売契約について、賦払金の支払いの義務が履行されない場合において、30日以上の相当の期間を定めてその支払いを書面で催告し、その期間内に支払義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払いの遅滞を理由として、契約を解除し、または支払時期の到来していない賦払金の支払いを請求することができない。
 これに反する特約は、無効となります。

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所有権留保の禁止

 宅建業者は、自ら売主として宅地・建物の割賦販売を行った場合、宅地・建物を買主に引き渡すまで(引渡しまでに代金の3/10を超える額の支払いを受けていない場合、3/10を超える支払いを受けるまで)に、登記その他、引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。
 宅建業者は、原則として所有権留保(引渡し後、所有権やその登記を売主にとどめておくこと) ができない。ただし、例外として、

@ 代金の3/10を超える支払いを受けていないとき
A 代金債務について、買主が抵当権・先取特権の設定登記をしたり、保証人を立てたりする見込みがないときは、所有権留保をすることができる。

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