@ 国土利用計画法の目的と仕組み
1. 国土利用計画法の冒的
国土利用計画法は、土地の有効活用を阻害するような土地ころがしなどを規制し、地価の不当な上昇を抑制し、限りある土地を有効
に利用させるためにつくられた法律です。
2. 国土利用計画法の仕組み
国土利用計画法は、このような目的を実現するため、さまざまな制度を設け、特に重要なものとして、土地の取引を規制するための
届出制と許可制がある。
土地の売買契約を結ぶ場合、国土利用計画法によって、都道府県知事に届け出、または都道府県知事の許可が必要になることが
あり、どのような手続きが必要になるのかは、その土地が不当に値上がりしそうな区域にあるかどうかによって異なる。
(1) 事後届出制
土地が不当に値上がりしそうにない区域では、土地の取引をした後で届出をすればよいことになっており、これを事後届出制という この事後届出制では、一定規模以上の土地の取引について、「その土地がきちんと有効に利用されるだろうか」という観点から、土
地の利用目的のみがチェックされることになっている。
(2) 注視区域と事前届出制
土地の値段が相当な程度を超えて上昇しているような区域について、地価の上昇をくい止めるために指定されるのが注視区域で
あり、注視区域に指定されると、その区域のなかで一定規模以上の土地の取引をする場合には、事前に、取引の内容を都道府県知
事に届け出なければならない。
ここでは、土地の利用目的とともに予定されている値段についてもチェックされる。
(3) 監視区域と事前届出制
地価が急激に上昇しつつあるような区域について指定されるのが監視区域であり、監視区域に指定されると、注視区域の場合より
も小さい面積の土地の取引であっても、事前に都道府県知事に届け出なければならない。
そして、ここでも土地の利用目的とともに予定されている値段についてもチェックされることになっている。
(4) 規制区域と許可制
土地ころがしが集中的に行われ、土地の値段が急激に上昇しているような区域では、土地取引を厳しく制限し、地価の上昇をくい
止めなければならず、このような区域を規制区域に指定できる。
規制区域に指定されると、土地の取引が許可制になり、土地の面積に関係なく、都道府県知事の許可がなければ取引をすること
ができなくなる。
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A 事後届出制
1. 事後届出の必要な契約
規制区域、注視区域および監視区域の各区域のいずれにも属さない土地について、土地売買等の契約を締結した場合のように、土
地に関する権利を目的とした取引かどうか、対価の授受を伴うものか、契約といえるか、という3点をすべて満たす場合事後届出をし
なければならない。
(1) 土地に関する権利
事後届出の必要な「土地売買等の契約」にあたるためには、「土地に関する権利」についての取引でなければなりません。
ここで「土地に関する権利」というのは、所有権、地上権、賃借権などの権利のことをいい、抵当権、地役権、永小作権、質権など
の権利については「土地に関する権利」に含まれない。
(2) 対価の授受
土地に関する権利を目的とする取引でも、対価の授受を伴うものでなければ、事後届出の必要な「土地売買等の契約」にはあたり
ません。
「対価」は見返りのことを指し、必ずしも金銭でなくてもよく、交換契約においても「対価」の授受があるといえる。
これに対して、土地をただでもらう贈与などの場合は、「対価」の授受がなく、事後届出の必要な「土地売買等の契約」にはあたら
ない。
「対価」の授受の点で特に注意が必要なものが、賃借権や地上権を移転・設定する契約です。これらの契約では、単に賃料や地
代を払うことだけではこれら権利の移転・設定に伴う「対価」の授受があるとはいえず、対価の授受があると認められるのは、これら
の権利の移転・設定に伴い権利金などの一時金が支払われた場合だけとなる。
(3) 契約による移転・設定
土地に関する権利が対価の授受を伴って移転・設定される場合でも、それが契約(予約も含む) によるものでなければ、事後届出
の必要な「土地売買等の契約」にはあたらない。
土地の所有権を数カ月後に移転する内容の売買契約を締結し、その売買契約については事後届出を済ませている場合、この売買
契約に基づいて取得した所有権移転請求権を行使して所有権を取得することは、何ら新たな「契約」によるものではない為、事後届
出の必要な「土地売買等の契約」にはあたらず、予約完結権の行使についても同様となる。
しかし、このような権利を行使するのではなく、権利そのものを第三者に売却したような場合は、契約による権利の移転がなされた
ことになり、屈出の必要な「土地売買等の契約」にあたる。
2. 事後届出が不要となる場合
事後届出の必要な「土地売買等の契約」に含まれている場合でも、取引される土地の面積が一定の面積に満たないときや、いくつか
の例外にあたるときは、事後届出は不要となる。
(1) 面積要件
取引が士地売買等の契約にあたる場合でも一定の面積未満の土地の取引であれば届出が不要となり、事後届出が必要な土地の
面積は、区域によって異なる。
区域ごとの面積用件
@ 市街化区域 2,000u以上
A 市街化調整区域 5,000u以上
B 区域区分が定められていない都市計画区域 5,000u以上
C 都市計画区域外 10,000u以上
ただし、上記の面積は一団の土地として合計した面積で届出が必要かどうかで異なり、事後届出の場合「一団の土地」にあたるか
どうかの判断は、買主などの権利取得者を基準に行われる。
(2) 届出不要な例外
@ 民事調停法による調停に基づく場合
A 当事者の一方または双方が国や地方公共団体等である場合
B 民事訴訟法による和解である場合
C 農地法3条の許可を受けて契約を締結した場合
3. 事後届出の手続き
(1) 届出義務者等
事後届出の届出義務者は、買主などの権利取得者であり、土地の利用目的や土地の権利の対価の額などについて、契約締結後
2週間以内に、土地の所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に対し、届出をしなければならない。
(2) 審査と勧告
都道府県知事は、権利取得者から屈出が行われると、屈出された内容のうち土地の利用目的について審査し、問題があると認め
た場合には、土地利用審査会の意見を聴いて、届出の日から起算して原則として3週間以内に、その土地の利用目的を変更するよ
うに勧告することができる。
また、都道府県知事は、権利取得者から届出が行われた場合に、土地の利用目的に関し必要な助言をすることができる。
(3) 罰則
都道府県知事より勧告を受けた届出義務者が、その勧告に従わない場合、都道府県知事は、勧告の内容と勧告に従わなかった
旨を公表することができる。
この場合、罰金などの罰則の適用はなく、また、契約か無効となることもない。
しかし、屈出をしなかった者や虚偽の届出をした者に対し、6月以下の懲役または 100万円以下の罰金に処せられる。
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B 注視区域における事前届出制
1. 注視区域とは
地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇し、または上昇するおそれがあるものとして、
国土交通大臣が定める基準に該当し、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区
域であり、地価の上昇の状況に応じてすばやく対処できるように設けられた制度。
都道府県知事は、地価の上昇の状況に応じて5年以内の期間を定めて、その地域を注視区域に指定することができる。
注視区域に指定されると、その区域のなかで一定の土地取引をするには、事前に、取引の内容を都道府県知事に届け出なければ
ならない。
届出があると、都道府県知事は、土地の利用目的だけでなく対価の額についても審査し、問題がある場合は、契約締結の中止や対
価の額の引き下げなどを勧告することができる。
2. 事前届出の必要な契約
(1) 土地売買等の契約
「土地売買等の契約」にあたるかどうかの判断基準は、事後届出制と同じである。
(土地に関する権利を目的とした取引かどうか、対価の授受を伴うものか、契約といえるか)
(2) 面積要件
区域ごとの面積要件について事後屈出制と同じであるが、「一団の土地」であるかどうかの判断の仕方については異なる。
事後届出制では買主などの権利取得者について判断するが、注視区域内における事前届出制では契約の両当事者について判断
しなければならない。
届出面積以上の土地を小さく区画割りして多くの人に分譲する場合、事前届出制は分譲者が届出を要し、事後届出制では購入者
の内、届出面積以上を購入した人のみ届出が必要となる。
また土地を買い集めた結果、届出が必要な面積以上の土地を取得する場合は、事後届出制でも事前届出制でも届出が必要とな
る。
(3) 届出不要な例外
届出不要な例外については、注視区域内における事前届出制と事後屈出制とほぼ同じ。
@ 民事調停法による調停に基づく場合
A 当事者の一方または双方が国や地方公共団体等である場合
B 民事訴訟法による和解である場合
C 農地法3条の許可を受けて契約を締結した場合となる。
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C 監視区域における事前届出制
1. 監視区域とは
地価が急激に上昇し、または上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると
認められる区域であり、監視区域は大都市に多く、通常の場合より小さい面積の土地取引であっても、事前に届出を要求し、地価の
上昇を抑える制度。
都道府県知事は、地価が急激に上昇しつつあるような地域について、5年以内の期間を定めて監視区域として指定することができ、
監視区域に指定する場合、都道府県知事は事前屈出が必要とされる土地の基準面積を都道府県の規則で通常より引き下げ、より狭
い面積の土地の取引についても事前届出が必要なように定める。
2. 事前届出の必要な契約
監視区域において事前届出が必要となる取引は、注視区域と同様だが、前項の為面積要件は異なる。(土地に関する権利を目的と
した取引かどうか、対価の授受を伴うものか、契約といえるか)
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D 事前届出制の手続
1. 届出義務者等
事前届出制の届出義務者は、土地売買等の契約を締結しようとする当事者であり、契約の両当事者は、予定対価の額や土地の利
用目的などを、土地の所在する市町村の長を経由して、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
また、届出後、予定対価の額を増額したり土地の利用目的を変更したりする場合は、改めて届出をしなければならない(予定対価の
額を減額する場合は、変更の届出をする必要はない)。
2. 審査と勧告
都道府県知事は、事前屈出がなされると、届出された内容のうち予定対価の額と土地の利用目的について審査し、問題があると認
めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、届出をした者に対し、屈出があった日から起算して6週間以内に、契約締結の中止や
予定対価の引き下げなどを勧告できる。
届出をした者は、6週間以内に勧告を受けるか、あるいは、勧告をしない旨の通知を受けるまでは、契約を締結することができない。
ただし、勧告を受けずに6週間が経過した場合は、契約を締結することができる。
3. 罰則
罰則などのペナルティについては、事後届出制の場合とほぼ同じ(都道府県知事より勧告を受けた届出義務者が、その勧告に従わ
ない場合、都道府県知事は、勧告の内容と勧告に従わなかった旨を公表することができる)となる。
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E 規制区域における許可制
1. 規制区域とは
都道府県知事は、土地ころがしが集中的に行われ、土地の値段が急激に上昇しているような区域を、5年以内の期間を定めて規制
区域に指定することができ、この規制区域に指定された地域では、都道府県知事の許可がなければ土地取引をすることができない。
2. 許可の必要な契約
規制区域において「土地売買等の契約」を締結しようとする場合は、都道府県知事の許可が必要となり、原則として、どんな小さな面
積の取引であっても許可が必要となる。
3. 許可制の手続き
許可の申請義務者は、土地売買等の契約を締結しようとする両当事者であり、契約の両当事者は、事前に予定対価の額や土地の
利用目的などを記載した申請書を、土地の所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に提出しなければならない。
都道府県知事は、申請書が提出されたときは6週間以内に、予定対価の額と土地の利用目的について一定の基準に従って審査し、
許可することができる。
なお、許可を受けないで土地売買等の契約を締結した者は、3年以下の懲役または 200万円以下の罰金に処せられ、その契約の
効力も無効となる。
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