@ 賃貸借
1. 賃貸借とは
賃貸借とは、賃料を支払って、物を貸し借りする契約をいい、民法に定めてある賃貸借の規定は、不動産だけでなく、動産も対象に
している。
貸主を賃貸人、借主を賃借人という。
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A 賃貸借の効力
1. 賃貸人の義務
(1) 修繕義務
賃貸人は、目的物を使用するのに必要な修繕をする義務を負います。
目的物が雨漏りしてきた場合、賃貸人が修繕しなければならず、目的物の修繕は、賃貸人の義務であると同時に、賃貸人の権
利という側面もあり、賃貸人が目的物の修繕などの保存行為をしようとするときは、賃借人はこれを拒むことができない。
その代わり、賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合に、これによって賃借人が賃貸借の目的を達すること
ができなくなるときは、賃借人は契約を解除できる。
(2) 費用儂還義務
賃借人が目的物に費用をかけることがあり、これらの費用の負担については、費用の種類を必要費と有益費に分けて考えなけ
ればならない。
必要費とは、目的物を使ううえで必要となる費用をいい、修繕等をした場合、賃借人は、必要費の全額の支払いを直ちに賃貸人
に請求することができる。
他方、有益費とは、目的物を使ううえでの必要性はないが、目的物の価値を高める費用をいう。
必要不可欠な行為ではないので、必要費のように直ちに全額を賃貸人に負担させるべきではない。
賃貸人が利益を得るのは、契約が終了し、目的物の返還を受けた時(賃貸借契約が終了した時)であり、この時賃貸人の選択に
より、価格増加分または支出額のどちらか(要するに安いほう) を支払えばよい。
2. 賃借人の義務
賃借人は、賃料を支払う義務を負いま、その支払時期については、後払いが原則となっているが、特約によって、これを変更するこ
ともできる(一般的には先払いの特約をすることが多い)。
また、賃借人の過失によらないで(たとえば落雷等により) 目的物の一部が滅失した場合、賃借人は、その消失部分の割合に応じて
賃料の減額を請求でき、残存部分だけでは契約の目的を達成できないような場合は、契約の解除をすることもできる。
3. 賃貸借の期間
賃貸借の期間は、20年を超えることができず、これより長い期間を定めたときは、20年に短縮される。
賃貸借期間が終了した後、更新する場合、更新後の期間も220年を超えることはできない。
4. 賃貸借の終了
期間の定めのある賃貸借は、その期間の満了により終了し、期間の定めがない賃貸借契約の場合は、当事者はいつでも解約を申
し入れることができる。
ただし、不動産において目的物をすぐに明け渡すことは困難な為、実際に契約が終了するのは、解約申入れ後、土地については1
年、建物については3カ月経過した時点となる。
また、当事者の債務不履行などがあれば、契約を解除することもできるが、賃貸借契約の解除の効果はさかのぼらない。
さらに、目的物が全部滅失したときは、目的物が存在しない以上、契約を存続させることは不可能な為、自動的に契約は終了しま
す。
5. 賃借権の第三者への対抗
新所有者に対して賃借人が賃借権を主張するためには、賃借権の登記をしておかなければならない。
賃借権の登記がない場合は、対抗することができない。
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B 賃借権の譲渡・転貸
1. 賃借権の譲渡・転貸とは
賃借権の譲渡とは、賃借人の地位をそっくりそのまま第三者に譲ってしまうことをいい、転貸とは、いわゆる又貸しをする場合をい
う。
2. 譲渡・転貸に対する賃貸人の承諾
賃貸人に無断で譲渡・転貸が行われ、第三者に目的物を使用させた場合、賃貸人は契約を解除できる。
ただし、背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、解除できない。
3. 譲渡・転貸後の法律関係
譲渡が行われた場合、賃借人は契約関係から離脱し、賃貸人と転借人問で賃貸借関係が生まれることになるだけで、これに対し
て、転貸の場合は、賃貸人と賃借人間の賃貸借関係が存続したまま、別途、賃借人と転借人間の転貸借契約関係が生まる。
したがって、転借人は賃借人に賃料を支払い、賃借人は賃貸人に賃料を支払うことになります。本来、賃貸人と転借人間には契約
関係はないが、転借人は賃貸人に対して直接義務を負う。
転貸借においては、賃貸人と賃借人間に賃貸借契約があり、賃借人が賃借権を有するからこそ、転借人に転貸できる為、賃貸人
と賃借人間の賃貸借が期間満了で終了すると、賃借人と転借人間の転貸借も終了せざるを得ない。
ただし、賃貸人と賃借人間の賃貸借契約が両者の合意によって解除された場合は、原則としてそのことを転借人に対抗することが
できず、転借人の賃借権(転借権)は失われません。
これに対し、賃貸人と賃借人間の契約が債務不履行によって解除された場合は、原則どおり、転借人の賃借権も消滅します。
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C 敷金
1. 敷金とは
敷金とは、賃借人の賃料不払いなどの債務不履行等に備えて、その担保とするために、契約の際に賃借人から賃貸人に支払われ
る金銭をいい、賃料不払いなどに対する充当がなければ、契約終了後に賃借人に返還される。
なお、賃料不払いに対して、敷金を充当するかどうかは、賃貸人の自由であり、賃借人のほうから充当を請求することはできない。
2. 敷金返還の時期
契約が終了すると、最終的に敷金は賃借人に返還されますが、その時期は目的物の明渡しが終了した後になり、先に明渡しを済ま
せる必要があるので、明渡しと敷金返還は同時履行の関係にはならない。
3. 当事者の交替と敷金の承継
@ 賃貸人が、目的物を新賃貸人に売却して登記を移転すると、賃貸人が新賃貸人に交替する。
A 賃借人が賃借権を新賃貸人に譲渡すると、賃借人が新賃貸人に交替する。
このような交替があった場合、前賃貸人と賃借人間で支払われていた敷金は次のようになる。
@ 自動的に新賃貸人に敷金が承継される
A 新賃借人に敷金は承継されない。
この場合、賃貸人の交替には、賃借人の承諾は不要であるが、賃借権の譲渡には、賃貸人の承諾が必要です。
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